Idolization(2018-)

画家は油絵を制作する際にパレットを使用する。使用したパレットと、そのパレットを再現した絵画を「対」として、作品としている。再現しようとする際に、また他に新たなパレットを準備し制作することとなる。そして、作品を制作したのちのパレットが次のモチーフとなり永遠と続く構造がここに発生する。意識して作られる絵画作品に対して、パレットは無意識であり無防備な痕跡を残す。本来あるべき絵画らしい絵画はここにはなく、パレットとそれを模した絵画しかない。実像はここにはなく、あるのは全て偶像であり、その偶像の連なりである。
油絵の具の特徴として揮発していくと同時に、絵の具が乾いて縮んでゆく、またゆっくりとして黄変することもある。パレットを模してはいるが、パレット自体もまた常に変化し続けている為に、パレットとパレットのような絵画は「=」にはならずいつまでたっても「≒」なのである。しかし、その曖昧な一致をひたすら繰り返す。

Painters use a palette when working on an oil painting. They regard a “combination” of the palette used and the painting that reproduces this palette as their artwork. In an attempt to reproduce the palette, they prepare a new palette and produce their work. This palette then becomes a motif in their next work, which generates a structure that continues forever. Paintings are made consciously, while the palettes indicate the unconscious mind and contain vulnerable traces. Here, you will not find a typical expectation of a painting but will find only the palette and the painting that imitates it. There is no real image here, but all here are idols and a series of these idols.

 

 

制作協力:森聖華、池谷賢一郎、林菜穂